2005年08月11日

映画『受取人不明』

『受取人不明』は、キム・ギドク監督の作品。最近のキム・ギドク監督の作品では『サマリア』が有名。1970年代、米軍が駐留する村に住む混血児とその母、若者たちを中心に村の人たちの人間模様を鮮烈に描く。


少女ウノク(パン・ミンジョン)は、幼少時、兄に右眼を傷つけられた容貌にコンプレックスを持っている。愛犬だけが唯一の心を開く相手だ。
混血児チャングク(ヤン・ドングン)は、村人とトラブルを起こす母親を足蹴にして、黒人米兵と韓国人との間に生まれた自分自身のアイデンティティに苦悩する。犬肉解体卸業を営む男(チョ・ジェヒョン)の元で気が進まない仕事を手伝う。
ジフム(キム・ヨンミン)は経済的理由で学校に行けず肖像画専門店で働くが、学校に通う悪ガキ二人組からはしょっちゅうイジメられている。ウノクに想いを寄せるが右眼が傷ついているウノクは心を開こうとしない。

ウノクの母(イ・イノク)は、朝鮮戦争で亡くなった夫の年金を頼りに生活している。
チャングクの母(パン・ウンジン)は村の外れにあるバスに住み村人たちと距離を置き、受取人不明で戻ってきた手紙を黒人米兵宛てに再び差し出す。出会った村人とは英語で会話をする。
ジフムの父(ミョン・ゲナム)は朝鮮戦争で右足を負傷し月30000ウォンの年金を頼りにして生活している。
犬肉解体卸業を営む男はチャングクの母を愛している。彼女に暴力を振るうチャングクを許せず仕返しをするものの彼女にそのことを逆に責められる。
異国での軍隊生活に堪えられない米軍兵のジェームズ(ミッチー・マローム)はウノクに近づき眼の治療を提案する。


キム・ギドク作品を観る時はいつも心の痛みを伴う。そして何かを見せ付けられハッとすることが多い。もちろんこの作品もそうだ。解決しがたい問題を抱えて傷ついた村人たちの暮らしぶりが描かれるこの映画には、見事な場面の数々が精密機械のようにびっしりと詰め込まれている。

若者が中心となる展開していくが、最終的に明るい展望が開けるという映画では決してない。どちらかというとかなり悲劇的だ。とりわけ犬肉業者やチャングクの母とチャングクに訪れる運命の悲惨さといったら見るに堪えない。朝鮮戦争や米軍の存在が背景となって悲劇が生まれたかのように描かれている。

多くの人が朝鮮戦争で直接的あるいは間接的に傷付いた人たちだ。しかしジフムをいじめる悪ガキ二人組はやや異質だ。彼らは朝鮮戦争の影響で駐留している米軍駐屯地の米兵からポルノグラフを買ったりジフムに英語で話しかけてからかったりするアメリカかぶれの韓国人として描かれている。彼らの存在は韓国内に駐留する米軍を利用するものの象徴だろう。

映画には犬が登場する。ウノクやジフンは犬を可愛がる。一方、犬肉で商売をする男は犬を撲る。実際に撲る場面は映像にはないものの、音だけでまるで本当に犬を撲っているかのように思わせられる。韓国の犬肉産業の一面が伺える。

韓国内に米軍はいらないという政治的メッセージを含んでいるかのような作品である。とりわけチャングクがアメリカかぶれの二人組に対して「お前たちみたいなアメリカかぶれが韓国をダメにする」と言うところに監督の意識が表れているように感じた。朝鮮戦争がなければ確かに彼らには違う運命があっただろう。しかし、村人は無関係といわんばかりに米軍機は空を飛ぶのだ。

お気に入り度:★★★★★★★★☆☆(8/10)

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原題:수취인불명
監督:キム・ギドク
脚本:キム・ギドク
音楽:パク・ホジュン
出演:ヤン・ドングン、パン・ミンジョン、キム・ヨンミン、チョ・ジェヒョン、パン・ウンジン
製作年度:2001年
製作国:韓国
上映時間:119分


By NOV at 2005年08月11日 18:11
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