2005年07月19日

映画『カナリア』

『カナリア』という映画を観た。一瞬『サマリア』と聞き間違えそうになる。東京ではもう何カ月も前に公開された作品だが、広島でようやく公開されたので鑑賞できた。この映画は、地下鉄サリン事件を起こした宗教団体オウム真理教にいた子どもたちのその後をモチーフにした作品である。

題名は、地下鉄サリン事件の後、教団の強制捜査時に有毒ガス探知に用いられたカナリアや、教団の中に閉じ込められた子どもたちをカナリアにたとえられるところから由来しているようだ。

岩瀬光一(石田法嗣)は、新興宗教団体「ニルヴァーナ」の崩壊後、児童相談所に妹の朝子と共に預けられた。光一の祖父(品川徹)は朝子だけを引き取った。光一は妹を奪い返し、行方不明の教団幹部の母(甲田益也子)を捜し出すため、児童福祉施設を抜け出した。

児童相談所を脱出した光一は、東京へ行き、妹を奪い返すつもりだが、所持金をロクに持たぬ状態で、ただひたすら歩いて単独で東京へ行こうとしていた。ところが光一は偶然トラブルに巻き込まれた少女と出会う。彼女の名は、由希(谷村美月)。由希は父親の虐待から逃げたい気持ちと光一の役に立ちたい一心で東京へ一緒に行くことに。

旅の途中、光一は無口であまり笑ったりせず押し殺したような表情でいることが多い。一方、由希はおしゃべりで表情豊かで光一とは対照的。閉塞的環境の象徴としての光一は、開放的で世俗的な世界の象徴の由希と出会うことで少しずつ新たな世界に光一は馴染んでいく。

光一の教団生活時代の一部も描かれている。家族揃って出家して教団に入団する場面。親と子を引き離す場面。お供物と称される妙な食べ物が光一と朝子に与えられる場面。光一が折檻を受ける場面。現実に存在する教団とどれくらい似せているのかよくわからないけれど、カルト教団の特殊な雰囲気自体はよく伝わってくる。

光一は由希やニルヴァーナの元信者たちと出会ったことで新たな自分を築きつつあったが、新たな悲劇が光一を襲う。その後の光一の身体変化はちょっと信じられないくらい急すぎるものだったが、悲劇の影響をあえてわかりやすく表現したのかもしれない。

由希がいうように、子どもは親を選べないけれど、大人も子どもも今より明日がよくなるよう前向きに歩くことからはじめるしかない。元教団の子どもに限らず、すべての人へ向けたそんなメッセージを感じる作品である。

この作品で、由希を演じた当時12歳の谷村美月の演技は評判通り素晴らしい。不安定な少女時代特有の危うさ、少年を守りたい母性、ボーイッシュな雰囲気を持つ由希のキャラクターが彼女の演技によく表れていたように思う。今後の活躍にも期待したいです。

(2005年7月16日シネツイン2で鑑賞)

『カナリア』公式サイト
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監督:塩田明彦
脚本:塩田明彦
音楽:大友良英
出演:石田法嗣、谷村美月、西島秀俊、りょう、つぐみ
製作年度:2004年
製作国:日本
上映時間:132分


By NOV at 2005年07月19日 20:02
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