2005年06月02日

映画『ミリオンダラー・ベイビー』

『ミリオンダラー・ベイビー』公式サイト
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ミリオンダラー・ベイビー@映画生活
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今年のアカデミー賞で作品賞を含め4部門を受賞した『ミリオンダラー・ベイビー』。トレーナーと女性ボクサーの愛を描いた物語だ。今作で2度目のアカデミー賞受賞となったヒラリー・スワンクが演じるひたむきなボクサー姿が美しい。

フランキー(クリント・イーストウッド)は長年ボクシングジムを運営していた。唯一の期待の選手、ビッグ・ウィリー(マイク・コルター)がタイトルマッチ挑戦寸前にフランキーのジムから去ってしまった。ある日、マギー(ヒラリー・スワンク)という見知らぬ女がフランキーのボクシングジムに現れた。マギーは、フランキーに「私のトレーナーになって」と頼む。女性ボクサーを育てる気のないフランキーはマギーの要求を拒む。

30歳を過ぎたマギーはフランキーにトレーナーを拒まれるが、やがてトレーニングの希望をかなえる。そして、ひたむきにトレーニングを積む。なぜそこまでボクシングに打ち込むのかはわからない。別に理由はわからなくてもいい。ボクシングに没頭するマギーのその姿は輝かしい。

ジムの住み込み雑用係スクラップ(モーガン・フリーマン)はフランキーと23年間の付き合いになる。スクラップはマギーと出会ったころからフランキーの意に反して彼女をジムに受け入れる。

初老のトレーナーのフランキーは、女をジムに受け入れるつもりはなかった。ただならぬマギーのボクシングに対する姿勢に心打たれ、いつしか彼女のトレーナーを引き受ける。フランキーはボクシングこそ彼女のすべてと思ったのだ。

娘との縁が途絶えてしまったフランキーと家族の愛に恵まれなかったマギーはボクシングを通じて心を通わせていく。そして、イギリスでの試合の時、フランキーはモ・クシュラの名の刺繍が施されたガウンをマギーに贈る。二人の愛は確実なものとなっていた。そして、青い熊の異名を持つ反則を常套手段とするドイツ人ボクサーと戦うこととなる。

この物語は間違いなく実直なな愛の物語だ。クリント・イーストウッド、モーガン・フリーマン、ヒラリー・スワンクの三人の演技で作られる世界は私たちを圧倒するだろう。特にモーガン・フリーマンの演技は魅力的である。彼の存在はストーリーの理解を助け味わいのあるものにしている。また、ヒラリー・スワンクの三カ月にも及ぶトレーニングの末行われた吹き替え無しのボクシングシーンは素晴らしい。

『ミリオンダラー・ベイビー』を観るにあたりアイリッシュの情報を事前に入手していたので、映画を理解するのに役立った。

  • フランキーとマギーはアイリッシュ・アメリカン(アイルランド系アメリカ人)。
  • マギーのラストネーム、「フィッジェラルド」は、典型的なアイリッシュ・ネーム。
  • グリーン(緑)は、アイリッシュのナショナルカラー。
  • 「ハープ」は、アイルランドの象徴。
  • アメリカのボクシングの歴史で、アイリッシュのチャンピオンが一時代を築 いた時期がある。
  • アイリッシュには熱心なカトリック教徒が多い。

シカゴ発 映画の精神医学:ミリオンダラー・ベイビーより引用させていただきました。)

未見の人へのメッセージとして、単純にボクシングを描いた映画ではないということには留意しておいていただきたい。『ロッキー』のような映画を想像しているととんでもないので。


ここからネタバレです。ご注意を。

『ミリオンダラー・ベイビー』のストーリーは、後半、転回する。憎憎しい青い熊女と対戦中、パンチを浴びたマギーは倒れ、スツールの座面で頚部を損傷してしまう。

第一頚椎から第四頚椎のどこかを損傷したのだろう。(映画では第一頚椎と第二頚椎と言っていたような気がする。)そして頚髄の損傷により、マギーは横隔膜や肋間筋を動かせなくなった。自発呼吸はできず人工呼吸器に頼らないと生きて生けない状態となってしまう。当然、全身は顔以外動かせない状態だ。

それからは私の頭に『海を飛ぶ夢』が頭をよぎってしまった。尊厳死、安楽死の問題になっていくのである。ところで、なぜだかわからないが、気管切開したマギーは声を出すことができた。普通はできないはずなのだが、そのようなことができる特殊な人工呼吸器なのだろうか。

褥瘡ケアがいい加減なのか足をも切断してしまうハメになったマギーは日に日に弱っていった。そして、輝かしい日々は遠くなり、死を望むようになっていった。元々、フランキーはそんなマギーを励ましていた。しかし、二度も舌を噛み切り自殺を企図したマギーに対してフランキーは安楽死を行うことを決定した。

フランキーは夜中マギーの病室に忍び込み、人工呼吸器の管を取り外し、マギーの体内にアドレナリンを大量に投与した。すぐにマギーの心臓は停止した。カトリック信者のフランキーのこの行為は予想外の行為だった。

マギーの苦しかったかもしれない安楽死をフランキーは行った後、二度とジムには戻らなかった。最後の場面、マギーと訪れた店でフランキーはおいしそうにレモンメレンゲパイを食べている。その後のフランキーはどこへ向かったのだろう。
栄光と転落を一気に我々に見せ、人生について深く考えさせる映画だ。マギーはマギーの人生をしっかり歩んだと私は思うしかなかった。(2005年6月1日ワーナー・マイカル・シネマズ広島で鑑賞)

原題:Million Dollar Baby
監督:クリント・イーストウッド
原作:F・X・トゥール
脚本:ポール・ハギス
音楽:クリント・イーストウッド
出演:クリント・イーストウッド、ヒラリー・スワンク、モーガン・フリーマン、アンソニー・マッキー、ジェイ・バルチェル
製作年度:2004年
製作国:アメリカ
上映時間:133分


『ミリオンダラー・ベイビー』のDVD、サウンドトラックや原作本の紹介

ミリオンダラー・ベイビー 3-Disc アワード・エディション
クリント・イーストウッド F・X・トゥール ヒラリー・スワンク
3枚組み初回受注生産限定商品。ディスク1は本編DVD、ディスク2は約80分の特典映像(うち20 分は、日本版本商品のみの、日本で収録された特典映像-イーストウッドインタビュー、記者会見、 ジャパンプレミア等-を収録)、ディスク3はサントラCD。※限定品に付き数に限りがあります。サントラも付いてお買い得。 ミリオンダラー・ベイビー 3-Disc アワード・エディション

ミリオンダラー・ベイビー DVD
クリント・イーストウッド F・X・トゥール ヒラリー・スワンク
ミリオンダラー・ベイビー


『ミリオンダラー・ベイビー』のサウンドトラックは国内盤と輸入盤があります。

オリジナル・サウンドトラック「ミリオンダラー・ベイビー」
クリント・イーストウッド サントラ
オリジナル・サウンドトラック「ミリオンダラー・ベイビー」
国内盤のサウンドトラックです。

Million Dollar Baby [Original Motion Picture Soundtrack]
Clint Eastwood Kyle / Stevens, Michael Eastwood Lennie Niehaus Hollywood Studio Symphony
Million Dollar Baby [Original Motion Picture Soundtrack]
こちらは輸入盤のサウンドトラックです。リンク先で少し試聴もできます。


ミリオンダラー・ベイビー 文庫本
F.X.トゥール
ミリオンダラー・ベイビー


By NOV at 2005年06月02日 12:47
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コメント

この映画はとても心を打たれました!二人が徐々に心を交わし合い、マギーが無邪気に喜ぶ笑顔がとても印象的だっただけに、後半は本当にやるせない思いで一杯でした。そして、それぞれの俳優の演技がホント素晴らしくて、どんどん映画に惹きこまれます。是非観て頂きたいお勧めの映画ですね。
こちらにTBさせて頂きますね。よろしかったらボクのブログにもTB&評価のコメントお待ちしてます。

Posted by かんすけ(シアフレ.blog) at 2005年06月07日 10:05

はじめまして。かんすけさん。
心だけでなく体も打たれたような気になる映画ですね。個人的にはヒラリー・スワンクの熱演が気に入っています。
コメントありがとうございました。

Posted by NOV at 2005年06月08日 01:29

コメント&TBありがとうございました。

最後はフランキーどういう気持ちだったんでしょうね。
神父様に「生きるすべてが無になる」みたいに言われたのにそれを選びましたよね。
つまりすべてなくしてしまっても良いくらいの深い愛だったのかな。。
いまだに答えを模索中です。
これほど長く考えさせられるのは初めてです。

Posted by foo at 2005年06月08日 08:57

こんにちは。
ひさしぶりに映画館まで足を伸ばして鑑賞してきたこの作品、素晴らしかったと思います。
クリント・イーストウッドはアカデミー会員にウケよすぎると思ってましたけど、実際に本作を観れば、オスカーにも納得でした。

こちらにTBさせていただきました。
事後報告になってすみません。

Posted by una noche at 2005年06月12日 09:12

***fooさんへ***

最後のフランキーの気持ち、そしてあれからどうしたのか気になりますね。
レモンメレンゲパイを食べてましたけど、あのあと自殺するという事も考えられないわけではないし、あるいは、そんなことはせずにあの店を手に入れるのかもしれない。どういう解釈が有力なのかわかりません。詳しい方がいれば教えていただきたいですね。


***una nocheさんへ***

確かにミリオンダラー・ベイビーのオスカーは納得ですね。
生きるという事のあらゆる要素が詰まった作品ですね。
トラックバックはご自由に遠慮なくどうぞ。報告は特に必要ありませんよ。

Posted by NOV at 2005年06月14日 02:29
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