2005年05月06日

映画『海を飛ぶ夢』

『海を飛ぶ夢』公式サイト
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アレハンドロ・アメナーバル『海を飛ぶ夢』独占インタビュー - FLiXムービーサイト

映画『海を飛ぶ夢』を見ました。実在した人物、ラモン・サンペドロが前向きに死ぬ権利を勝ち取ろうとする話です。この作品『海を飛ぶ夢』は第77回(2005年)アカデミー賞外国語映画賞を受賞。最近は伝記映画にアカデミー賞が贈られることが多いと聞きます。もしかしたら『海を飛ぶ夢』もその一連の流れ中にあるのかもしれませんが、『海を飛ぶ夢』がそのような流れの中で単純に選ばれた映画ではないと思います。アレハンドロ・アメナバール監督が見事にラモンの人生を描いています。生きることの意味を深く観客に突きつける映画です。また、主演のハビエル・バルデムの表現力豊かな演技が素晴らしい。人生とは?、命は誰のもの?、様々な答えの無い問いがそこにある。

ラモン(ハビエル・バルデム)は25歳の時に引き潮の海へ飛び込んだために頚椎損傷する。四肢麻痺となりラモンが船員だった時代の自由な時間は過去のものとなってしまった。それ以来ラモンは家族の手厚い看護で生活していた。しかし、事故から26年後、ラモンはそのような人生を自由に楽しめない生き方に疑問を感じ、自ら命を絶つことを希望するようになる。ラモンは人権支援団体や弁護士の力を得て合法的に命を絶つことを可能にしようと活動する。

四肢麻痺のラモンの周りには多くの人がいます。兄、義姉、父や甥など、ラモンの家族、ラモンを支援する弁護士フリア(ベレン・ルエダ)や人権支援団体のメンバーのジュネ(クララ・セグラ)、テレビでラモンのドキュメンタリー番組を見て勇気付けられたロサ(ロラ・ドゥエニャス)。彼らとラモンとの交流を見ていると、本当はラモンは人生を楽しんでいるのではないかという錯覚を感じます。とても死を望んでいるようには思えなかったりします。とても妙な違和感を感じました。なかなかこういった感覚を覚える映画はないと思います。

この先少しネタバレ含みます。

単純に言えば、ラモンはとにかく命を断ち、人生を終わらせたかったのでしょう。明日も生きることを望んでいる死に直面した人とは対極の位置にあったラモン。「人はいつか死ぬのだからそんなに死に急がなくても」と私は思うのですが、死を自ら決定するということがきっとラモンに残された唯一の本当の自由だったのでしょう。

しかし、家族の側に立つとそれはとても悲しく思えます。特にラモンが青酸カリウム水溶液を飲む前の言葉「今まで生きてきて楽しいことなんて何も無かった」は家族にとって悲しいメッセージです。わざと挑発的なメッセージを投げることによって、ラモンは世間にいろいろと問いたかったのかもしれません。亡くなる前の期間、ラモンは恋愛を楽しんでいたように見えただけに「今まで生きてきて楽しいことなんて何も無かった」の言葉は衝撃的でした。

ところで、この映画は尊厳死がテーマと言われていますが、尊厳死とは少し違うような気がしました。このことに関して専門家ではないのではもしかしたら見当違いかもしれませんが、私が認識していた尊厳死は該当患者が不治の病であり、死期が迫っていて、延命治療をしないと生存できない状態となった場合それを行わずに該当患者が死を選択することと捉えていました。

ラモンの場合、四肢麻痺なので不治の病には当てはまりますが、死期が迫っているとまでは言えません。また、一般的に延命治療と呼ばれるものは行われておらず、看護あるいは介護を受けている状態でした。その考えで行くと、ラモンはどちらかと言うと積極的な安楽死を求めていたような気がします。(2005年4月23日TOHOシネマズ緑井で鑑賞)

海を飛ぶ夢@映画生活にもレビュー・批評・感想があります。
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監督:アレハンドロ・アメナバール
脚本:アレハンドロ・アメナバール、マテオ・ヒル
音楽:アレハンドロ・アメナバール
出演:ハビエル・バルデム、ベレン・ルエダ、ロラ・ドゥエニャス、クララ・セグラ、マベル・リベラ
製作年度:2004年
製作国:スペイン
上映時間:125分

映画『海を飛ぶ夢』の本やサウンドトラックあります

海を飛ぶ夢 本
ラモン・サンペドロ
海を飛ぶ夢
by G-Tools

海を飛ぶ夢 オリジナルサウンドトラック
サントラ
海を飛ぶ夢  オリジナルサウンドトラック

By NOV at 2005年05月06日 07:18
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コメント

TBありがとうございます。
まだブログはじめたばかりでルールもよく分かってませんが今後とも宜しくお願いします。

Posted by kanzume at 2005年05月17日 20:42

こんばんは。
私もまだブログ歴は1年もないので短いです。こちらこそよろしくお願いします。
実はこの映画って突き詰めると自ら命を終わらせる事はいいのか悪いのかを問いかけている気もしました。ジサツってその人の意志であれば尊重されるの?どうなの?って思いましたよ。

コメントありがとうございました。

Posted by NOV at 2005年05月18日 00:59

「今まで生きてきて楽しいことなんて何も無かった」これはきついですね。それに事故が起こる前のことまでも否定してしまうことになりますもんね。でもあの言葉は死ぬことを認めなかった人々への言葉なんでしょうね。

Posted by カヌ at 2005年05月19日 00:22

*カヌさん*

こんにちは。
最後のラモンの言葉はカヌさんの言うとおりの意味合いが大きいでしょうね。
人間誰しも何かしら不自由な状況と言うのはあります。そういう時、普通の人なら、旅に出たり、転職したり、ハメをはずしたりできます。ラモンにとっての不自由からの脱却は本当に自分から死を選ぶしかなかったのでしょうね。でもそれってやはり許されない行為のような気がしますが、ラモンの気持ちはラモンにしかわかりませんから、途方もない気分になります。
コメントありがとうございました。

Posted by NOV at 2005年05月19日 08:12
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